MyDataJapanの想いと行動指針を表す、MyData Japan Visionを作成しました。

2022年6月4日 Ver1.0掲載

私たちが目指したい社会の姿(ビジョン)と私たちの使命(ミッション)、そしてB(Business)、L(Legal)、T(Technology)、S(Society)の4領域における私たちの行動指針を表しています。

MyData Japan Vision 2022 Ver 1.0 概要

MyDataJapan Vison 2022

ビジョン(私たちが目指す社会)

パーソナルデータに対する人間中心で倫理的なアプローチにより、公正で、持続可能で、多様なウェルビーイングを実現できるデジタル社会

ミッション(私たちの使命)

人間中心の視点と価値観を持つ多様な領域の専門家や組織から構成されるシビル・ソサエティとして、ビジネス(B)、法律・行政(L)、技術(T)、市民/社会(S)の各領域に関わり、それらの領域をつなぎ、行動することで、行政・企業・市民を含む多様なステークホルダによる公正で倫理的なパーソナルデータの活用を促し、社会課題の解決とイノベーションの実現を図る

行動指針(BLTSの観点から)

B (ビジネス、Business)
人間中心で倫理的でオープンなデータ利用が、企業にとって最も魅力的なアプローチとなるエコシステムの実現に向けて働きかける

1)企業の意識変革
・MyDataがブランドであり、MyData の原則に基づくことが競争優位性の源泉なるという意識改革を促す
・企業による自発的なデータポータビリティの実装を促進する
2)人間を中心に置いたサービス、MyDataオペレーターのエコシステム促進
・倫理的で人間中心のパーソナルデータマネジメントが持続的収益を生むビジネスモデルを作る
・MDJは企業と共に議論し、一緒に作る協力者になる
・人間を中心に置いたサービス、MyDataオペレーターに取り組む企業を支援し、エコシステムの発展を促す
L (行政/法律、Legal)
同意への過度な依存から脱却し、公正で倫理的で人間中心で信頼できるデータ活用のフレームワークの実現を目指す

1)過度な同意依存からの脱却
・個人による「同意」には限界があるため、同意以外の手段によってもデータ保護やプライバシーが確保されるように、政府・企業等による実効性があるプライバシーガバナンスの向上を図る
2)政策形成過程への積極的関与
・プライバシー尊重の観点から意見の発信、提言を積極的に行う
・デジタル政策に関する政府の委員会などでMyDataの所属メンバーとして出席する者が市民社会の代表者として当たり前のように参加しているようにする
・政府の資料やプレゼンのなかでMy Dataの提言する内容が当たり前のように取り入れられているようにする
3)電子政府/行政におけるMyDataオリエンテッドな仕組みの実装とその制度的保障
・電子政府/行政へのMyDataオリエンテッドな機能の実装を促す
・Society 5.0等における個人が主権を持つデジタルアイデンティティの枠組みを国が先頭になって実装するように促す
・(上記に関する)社会的なコンセンサスの形成に貢献する
T(技術、Technical)
MyData関連の技術・サービス開発を支援し、人間を中心に置いたサービス/ MyDataオペレータ のエコシステムを促進する

1)MyData関連技術・サービス開発の支援
・技術情報の交換、議論などの場の提供、支援を行う
・市民としての関心事項や要件、責務とそこから導き出される 要求事項の提示など、市民視点で各種関連技術やサービスに対する要求事項の整理を行う
2)MyData関連技術やサービスの評価、推奨、エンドース
・MyDataオペレーターの支援・普及推進を行う
・将来的には認定事業を行う可能性もあり
S1(市民/個人、Citizen/Individual)
市民のデータに対する理解や能力を高め、市民が自らのデータを自身や家族、社会のために安心して積極的に活用できるようにする

1)市民の意識変革
・個人が自らの権利とその限界を認識し、多様な価値観を理解し、議論し、行動する文化の実現を図る
・データ提供時のリスクとメリットを理解し、自己や社会のために、提供可否や提供条件を自らコントロールすることが当たり前だという意識を持つようにする
2)個人がみずからのヘルスケアデータやアイデンティティデータなどを管理する
・個人がPHR(Personal Health Record)を活用し、自身のヘルスケアデータをみずからが管理して、自身の健康や社会に貢献できるようにする
・個人が自らのアイデンティティ情報を管理し、多様なサービスでの利活用や社会への貢献を行えるようにする
3)「MyData的な」アクションを能動的に
・個人によるMyData ツールやプロダクトの利用を推進する
・個人が自身のデータを「MyData」という概念で理解できるようにする 
・MyData的な観点をもつことが当たり前であると認識されるようにする
・個人が自身のデータの利用規約(Terms and Conditions)を定義できるようにする
・個人(市民)との対話を重視し、MDJに入会する個人を増やす
S2(社会、Society)
パーソナルデータの保護と利活用に関するシビル・ソサエティとして、市民組織を含む様々な関係者、組織と連携、行動していく

1)シビル・ソサエティ(Civil Society)の活動
・シビル・ソサエティとして、政府や企業から自立して、パーソナルデータの保護と利活用に関し「市民社会と政府や産業界との橋渡し」を行う
・パーソナルデータの保護と利活用に関する日本における市民社会の代弁者になる
・MyDataJapanが日本におけるシビル・ソサエティの先駆けになる
・多様な市民と対話を行い、市民の参加を促進し、透明性のある意思決定と行動を行い、会員や市民の信頼を獲得する
2)市民組織との連携
・データに関する専門家集団として市民組織を支援、連携し、市民視点でのデータ政策の立案や提言などに貢献する
3)デジタル・アイデンティティ
・信頼できて使いやすい個人が主権を持つデジタル・アイデンティティの実現を図る
・行政組織が取りこぼした個人に対しても、個人が主権を持つデジタル・アイデンティティの提供を実現する
4)データに関する学びの場
・市民がデータについて学び考える場を構築する
・学生や市民、市民リーダー向けの教科書を作成する

用語の説明

  • シビル・ソサエティ(Civil Society):
    • シビルソサエティは、政府や企業(For Profit Organization)の外側で、共通の関心と価値観をもって行動する市民サイドの組織を言います。通常の市民団体とは異なり、高い専門性や柔軟性、機動性を有し、 「社会と政府の橋渡しをする組織」として、欧米では政策決定プロセスにCivil Societyの代表者が参加することが増えています。例えばCSISAC(Civil Society Information Society Advisory Council)は、OECDのデジタルエコノミー政策に関する市民社会の橋渡しをするグループとして、EU以外も含む100超の団体や個人が参加しています。
  • ウェルビーイング(Wellbeing): 
    • 日本語で健康、幸福と訳されますが、「健康」の側面では「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが 満たされた状態にあること(世界保健機構WHO前文)」を言います。「幸福」という側面では、happinessが「感情的で一瞬しか続かない短い幸せ」を指すのに対し、wellbeingは「身体的、精神的、社会的に良好な状態で、持続する幸せ」を指します。最近は、Society5.0の目指すべき社会像でも「多様なウェルビーイングが実現される社会」と記載されています。
  • MyDataオペレータ
    • MyData Globalが提唱する概念で、MyDataの原則に基づき、「データ保有者」、「データ利用者」、「個人」の橋渡しをして、人間中心で、倫理的、インターオペラブルなサービスを提供する事業者またはそのサービスを指します。MyData Globalでは独自の評価基準に基づき、毎年、申請のあった事業者やサービスを審査し、MyData Operator Awardを認定しています。詳しくは「Understanding MyData Operator(日本語版)」を参照ください。
  • デジタル・アイデンティティ:
    • 人間や組織、ものなどの主体(エンティティ)をコンピュータで処理ためのデジタル化された情報で、アイデンティティとは主体(エンティティ)に対する属性情報の集合を指します。主体が人間である場合は、デジタル・アイデンティティはその主体のパーソナルデータのサブセットであり、例えば、氏名、住所、生年月日、クレジットカード番号、ユーザ名、パスワードなど多様な情報から構成されます。顔写真データなどバイオメトリクス情報もアイデンティティ情報の一つです。このデジタルアイデンティティを特定の事業者ではなく、個人が自ら管理、開示/停止などの主権を持つものを自己主権型デジタルアイデンティティ(Self Sovering Identity)と呼びます。
  • PHR(Personal Health Record):
    • 個人が、自身の医療・健康情報を、自ら管理するための仕組み、またはデータ群を示すことばです。電子カルテ(EMR/EHR)が医師や医療機関が患者のデータを効率的に管理/共有するためものであるのに対し、PHRは、自らの医療・健康データを個人が中心になって利用するための仕組みです。様々なセンサーや機器から取得したバイタル情報や日常的な生活記録など、いわゆるライフログデータも含みます。日本では、マイナポータル経由で自らの検診/健診情報、処方(薬剤)情報などを取得できるようになってきており、今後、API経由でこうしたデータをPHRに取り込み、自身、家族、かかりつけ医などと共有して適切な健康活動や生活を行う「患者中心型ヘルスケア」の実現が期待されています。